被相続人である父親が亡くなると、その時点で遺族である相続人が被相続人の遺産を全て承継します。
通常は、相続人全員による遺産分割協議の話合いがもたれ、それぞれの相続分の割合が決められます。
通常は、民法で定められた法定相続分通りの分割が行われますが、時々相続人同士のしがらみから話合いの決裂することがあります。
遺産分割協議において話合いが決裂した場合は家庭裁判所による調停、若しくは審判に委ねることになります。
家庭裁判所を利用する場合は、協議の内容に納得できない人が遺産分割調停事件として申立てます。
仮に、相続人が3人の兄弟で、その内の1人が遺産分割に納得できなかった場合は納得できない人が申立人、他の2人が相手方となります。
調停は訴訟のような公開の法廷で争うものではなく、未公開の部屋で行われます。
従って、各自のプライバシーが第三者に漏れるようなことはありません。
調停ではまず調停委員が兄弟双方からそれぞれの主張を確認しますが、兄弟同士が直接顔を合わせることはありません。
兄弟はそれぞれ異なる待合室で待機しており、調停委員に呼ばれたら部屋に入ります。
敵対する兄弟が代わるがわる調停委員に呼び出されて意見を述べるということが何回か繰返されます。
調停委員は双方から参考資料を提出してもらったり、遺産の鑑定を行ったりして実態の把握に努めます。
最終的には調停委員が双方に解決案を提示し、話合いによる合意を目指します。
なお、調停は月1回程度のペースで行われます。話合いによる決着までの期間は早い場合で3ヶ月程度、もつれると1年以上続くこともあります。
調停には法的な拘束力が無いため、調停委員の提示した解決案通りに合意しなければならないわけではありません。
結果的に調停が不成立になった場合は、自動的に審判手続きに移行します。
審判になると、裁判官が遺産となる財産や権利、その他一切の事情を考慮し、最後に裁定を下します。
審判における裁定に対しては、不服があっても従わなければなりません。
ちなみに、最初から審判を求めることはできません。家族間のことは当事者同士の話合いによって解決することを前提としています。
遺産分割ではもめることが少なくありませんが、民法は公序良俗を原則としており、基本的に法定相続分通りの裁定になるのが一般的です。
ところで、被相続人に遺言書があった場合は遺言書の内容通りの相続が基本となりますが、相続人全員の合意があれば、遺言書とは違った遺産分割が可能です。